体の機能低下の生理学

【要約】持久力は20歳に比べ60歳では男性では49%の低下し、女性では57%も低下する。

足の筋力は20代前半に比べ50代後半では男性は30%低下し、女性では40%低下する。

競技成績を日本記録とトレーニングを長い間続けてきている70代を比較すると陸上競技の100m走で25%、800m走と5,000m走で35%低下。

水泳の100m 自由形、1,500m自由形では100m自由形で30%、1,500m自由形で45%低下する。

体の機能低下は避けられず、特に瞬発力に比べ持久力の低下の方が大きい。

(詳細は以下)

20代以降加齢とともに低下する能力を、①エネルギー供給能力からみた体力(ねばり強さと力強さ)および②競技成績から説明する 

【体の粘り強さ】20歳頃の最大酸素摂取量の平均値に比べ60歳代の平均値は、男性は49%の低下を示す。加齢による平均低下率を算出すると、1.1%/年となる。

女性についてはそれぞれ57%、1.2%/年である。

これはアメリカ人でもほぽ同様であり、男性の低下率は1.0%/年、女性の低下率は1.1%/年である。

【体の力強さ】力強さを脚伸展の動的最大筋出力でみると、男性の場合、20歳前半で1,067ワットが50歳後半で725ワットとなり、約30%の低下を示す。

女性では、20歳前半で639ワットが50歳後半で366ワットへと約40%低下する。

これは、男性が約0.9%/年、女性が約1.0%/年の平均低下率に相当する。

力強さでは、加齢とともに日常生活で、「すばやく・力強く」動くことが少なくなっていくことによることも大きいと考えられる。

【競技成績】中高年齢者を対象としたマスターズ陸上競技大会および水泳競技大会で得られた資料をもとに、加齢に伴う競技成績の低下を説明する。

男性の100m走、800m走、5,000m走の日本記録から平均走速度を計算し、これを100としたとき、70歳代の最高記録の平均走速度は,100m走で25%、800m走と5,000m走で35%低下する。

また,10歳ごとの競技成績の低下率は、男性では5-8%,女性では8-10%である。

水泳の100m 自由形、1,500m自由形についてみると、男子は20歳代前半から70歳代後半にかけて、100m自由形で30%、1,500m自由形で45%低下する。

また、10歳ごとの競技成績の低下率は、7-9%である。ただし、これらの資料は、激しいトレーニングを長い間続けてきている中高年齢者のものであるので、一般人にあてはまらないことを注意しておくべきである。

エネルギー供給能力からみた体力も、競技成績も、その低下率はともに女性のほうが大きい。

参考文献 日本人のエアロビック・パワー

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