東大などチーム 認知行動療法の有効性指摘
不眠症になった人が治療を受ける際は、睡眠薬をのむより、不眠を悪化させている習慣を変える「不眠の認知行動療法(CBTII)」から始める方が効果が高いことを、東大などの研究チームが明らかにした。
論文は27日、日本精神神経学会の学術誌のオンライン版に掲載された。
不眠症状に悩む人は日本人の30〜40%にのぼり、10%弱が慢性的な不眠症とされる。
治療は薬のほか、認知行動療法、薬と認知行動療法の併用が効果があるとされている。
認知行動療法は、「8時間は寝る必要がある」といった思い込みを捨てるなど、行動や物事の受け止め方を工夫し、不眠症状を改善する治療法。
ただ治療を始める際、どの方法が長期的にもっとも効果があるのかはわかっていなかった。
東大大学院博士課程(精神神経科)の古川由己さんらのグループは、初期治療について比較した臨床試験を網羅的に調べ、統計的に解析した。
その結果、薬物療法によって長期間、症状が落ち着いた人は28%だったのに対し、認知行動療法は41%と、より効果が高かった。治療を途中でやめてしまう率は、認知行動療法の方が低かった。
薬と認知行動療法の併用は、薬だけの治療よりは効果があったが、認知行動療法だけの治療より効果が高いとは言えなかった。
欧米では、認知行動療法を治療の第一選択として推奨している。
古川さんによると、薬の処方に比べ、認知行動療法は手間がかかるため、広がりにくいという。「認知行動療法は効果が高いだけでなく、副作用も少ない。
日本で第一選択となっている睡眠衛生指導は有効性が示されておらず、そこに割かれている時間をふりわけてはどうか」と指摘する。
朝日新聞 8月29日朝刊より