昭和の名灸師 深谷伊三郎の著者より
小児ぜんそくを治療するときは、ます管散法を行なう。
管散法というのは鍼管の類、他にこれに代るべき管状のものがあればそれを用いる。
鍼管もなるべく肉の厚いのがよい。
その管状のもので背部膀胱経を上から下まで、リズミカルにチョンチョンと突くように軽くたたいていく。
その要領は小児針を施すのと同じようにする。
それとこれはあまり痛さを感じさせないように軽くたたく。
そうすると上から下へとたたいていくと、最初はくすぐったいと身体をくねらせるのだが、病気の反応帯にはいると、痛いとさけんだり、身体を前に下げる。
その部位はほとんど隔兪の周辺である。
そこでぜんそく兪(隔兪の外上方3分)をねらつて按圧すると、小児ぜんそくの児童にもそこに硬結と圧痛点が現われている。
肩凝りがあれば、肩井それから身柱、これは小児の治療には必ず取穴せねばならない。
こうして取穴した各穴へ糸状灸で五壮以上施灸する。
糸状灸だと決して熱がらない。
施灸を中止してから後に灸痕も残らないものだ。
小児は灸というと熱いだろうといぅ恐怖感でいやがる。
これは大人でも同類がいるが、一回すえてみると、それほどの熱さでもなく安心するのを常とする。
四才の女児でもニ回目からはいやがらずに自分から進んで来ている。
それは一回の施灸で苦痛症状がとれてしまうからだといえる。
小児に灸をすえるには最初の第一回が一番大切だと思う。
最初に安心させると次回からは今もいったように自分から進んで希望するようになる。
その方法の一つに幼児の場合は決して火を見せないことがよい。
向うを向かせておいて背中に糸状灸をすえ、竹筒の灸熱緩和器を使用すると、 チクリと熱さを感じても、火を見ないとそれは熱く感じないで、痛く感じて注射でもされたと思っているのがよくある。
子供は大人と違って、少量で大人の倍も効くのだから糸状灸で五壮すえると、かなりの効き目となる。
それから、管散法をやると、悪い所は管の大きさだけのブツブツがまるであせものような斑点となつて現われる。
これは異種タンパク体療法としての効果が期得出来る。
小児ぜんそく患者の児童にはこんな方法を私は施している。(昭和四十七年七月)