立命館大教授(家族心理学)宇都宮博さんの話(朝日新聞2024年5月20日朝刊より)
長年、夫婦の関係性を分析しています。
シニア層の男女を対象にした私の調査では、男性は結婚生活に満足している人が約8割。女性も約6割は満足していました。
一方で「相手とわかりあいたいと思っている(いた)のに、わかりあえていない」といった感覚の人は、女性が男性の3倍以上にのぼっていました。
こうした女性の夫には、結婚生活に満足している人が少なくありません。「ご飯をつくってくれる」など、期待する役割を妻がしてくれることに満足し、結婚生活そのものが高い評価になるという構図です。
ただこれは、夫側の一方的な自己満足の可能性があり、注意が必要です。
社会で男女平等が強くいわれるようになって久しい現在も、いまだに女性の方が家事などの「ケア役割」の負担が多い。
私の研究では、夫婦ともに配偶者をかけがえのない存在として意味づけている夫婦ほど、夫の家事労働への参加度も、妻の満足度も高いことが確認されています。
家事分担は個々の夫婦が納得した形で行えばよいと思いますが、夫のあり方が大きな鍵を握っているようです。
夫婦のあり方がどう変容していくのか、今後も追っていきたいと思います。