「ああすればこうなる」式とは
「ああすればこうなる」式の考え方というのは意識中心社会ならではの考え方です。
都市の人がはまりがちな考え方だと言ってもいい。
スペースシャトルやロケットは「ああすればこうなる」式のお手本だから評価されるのです。
たしかに人間があれだけ手数をかけて、ともかく月までロケットを飛ばす、それはそれですごいと思います。
しかしある程度理屈を知っている人なら、理屈の上でそうなるのだから、そうなるに決まっていると思うだけのことです。
逆に考えてみれば退屈な結果だともいえます。
月まで飛ぶと思っていたら飛び超えて火星まで飛んだということならば驚くと思います。
実は生き物にはそういう予測不能なところがありますが、ロケットにはそんなことはありません。
予想された成功、もしくは失敗があるだけです。
旅行でもきちんとプランを立てて、そのとおりに進んだと言って喜んでいる人がいます。
私はそんな旅行はつまらないなと思う。
別に時刻表マニアの人をいけないといいたいわけではありません。
人の好みはいろいろで構わないのです。
自由です。
しかし世の中の原則が「ああすればこうなる」式に支配されてしまうのは絶対におかしい。
もちろん、皆が意味不明、予測不可能なことばかりしたら世の中は回りません。
旅行も、お金も持たず、時刻表も読めずでは成り立たない。
「ああすればこうなる」式でやる人がたくさんいないと世の中は回りません。
でもその原則が通じるのは実は思っているよりも限られた範囲だと知っておいたほうがいいのです。
これが第一原理になるとまずい。
それは暗黙のうちに原理主義につながります。
だから常に意識的に気をつけておかなくてはいけない。
それで私はこのことをいつも言っているのです。
「風が吹けば福屋がもうかる」ではないですが、「ああすればこうなる」式の蔓延が少子化につながっているのです。
子供はああしてもこうなりません。
どんなに一生懸命働いても米が不作ということはあります。
労働に対価が見合わないといってサラリーマンは怒って会社を訴えることもできるけれど、農家はお天道様を訴えるわけにはいきません。
毎日子供の様子を見るのは大変です。
会社の仕事に集中すると子供の方が留守になりがちです。
両立はとても難しい。
しかし、毎日手入れを続け、子供の様子を見ていれば親のほうにも努力、辛抱、根性が身についてくるものです。
もちろん、それは親のためにもなるのです。
超バカの壁 養老孟司著