腰痛治療の現状、問題点

触れてわかる腰痛診療(画像でわからない痛みをみつけて治療する)より
●腰痛治療の現状
1.画像診断で腰痛の原因を特定しようとしている
2.腰痛の多くは実は原因が特定できず、そういったものに心因性が影響するものが多いと認識されている
3.脊椎専門医は多忙なども手伝い、実は腰痛の保存療法に興味を示していないことがある
●腰痛の原因
1.3ヶ月以上続く慢性腰痛の60%は12ヶ月後も腰痛を有し、その改善率は思いのほか高くない
2.驚くべきことに腰痛の85%は原因が特定できない非特異的腰痛に分類される
3.一方、近年の医療レベルの進歩により、患者自身も多くの症状の原因を画像等を用いると特定できると
「誤解」しており、原因が特定できないことに対し不満や不安を訴えることも珍しくな
●腰痛の画像診断
1.レントゲン撮影では腰椎の変形は見ることができるが、これらの所見と腰痛との因果関係については様々な
報告があり意見の一致をみていない
2.さらなMRIでは、腰椎の変形を見出すことはできるが、無症候例であっても高率に変性変化は見られることから、
実際にはMRI撮影を行う大きな目的は、腫瘍や感染、骨折等、重大な疾患が隠れてないかを確認する意味合いがある
つまり腰痛の原因を明らかにするという点においては、MRI撮影を行う付加価値はほとんど無いことが知られている。
例えば、無症状の60歳男性の腰痛MRIでは半数以上に異常が指摘できるとの報告もあり、加齢に伴う変性が現在の
腰痛の原因かどうか、については特定することは難しい
●腰痛治療の専門医
1.脊柱外科を専門としている脊柱外科指導医は、整形外科所属で1300人余、脳神経外科所属で60人余名しかおらず、
日本の1億2000万人の全人口を網羅するには多いとは言えない。彼らは多くの難しい手術を担当し、手術前後の
管理や説明に多くの時間を費やす。さらに学術的な活動にも労力を費やしプライマリーケアとしての腰痛治療に
積極的にかかわれない実情がある。
2.外科治療であっても全ての腰痛が治るわけではない。腰痛治療ガイドラインによると腰椎手術後の60%では腰椎手術
を行っても腰痛は残存し、さらなる治療が必要となることが知られている。
腰痛の原因を腰椎に主眼をおいた場合、腰椎手術後に残った腰痛は手術方法の問題と捉えられてしまう可能性もあり、
腰椎手術が上手くいっていれば心因性に原因を探しかねない。
●腰痛治療の問題点
上記のように、腰痛の原因を腰椎、さらには腰椎の画像診断に求めてしまうこと。脊柱専門医が腰痛の保存療法に
多くの時間や労力を費やせないことが、現在の腰痛診療および腰痛治療の問題点であると思われる。

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