『慢性痛の脳内で何が起きているか?』

慢性痛のサイエンス 半場道子著より

◎原始的で本能的な恐怖・不安が大きいと、脳内バランスが崩れ慢性痛に転化しやすい。

慢性腰痛と線維筋痛症の例を挙げて、脳画像解析の結果を述べてきた。慢性顎関節症,過敏性腸症候群,慢性頭痛についても,ほぼ共通の機序が報告されている。

慢性痛とは,脳の疼痛抑制機構(全自動で痛みを抑えるシステム)の破綻もしくは機能低下によって起きることが,次第に明らかになった。

Harvard 大学のWoolfCJは,脳画像解析の知見を基に,dysfunctional pain(機能障害性疼痛)という,新しい概念を米国臨床学会に提唱している。

われわれの脳には,快の情動系が機能しており,生きる意欲や根源的な生命活動を支え,脳の疼痛抑制系を確立している。

この系は前頭皮質と結びついて、高次の精神活動(希望,期待,創造性,自己優越性の確立,楽観性の獲得など)にも関与している。

このような脳機能を破綻/低下させる引き金は何か?

恐怖、不安などストレス性の入力が過剰に続くと,90日以上の長期にわたってニューロン活動の停止が起きる。

そのため快情動(ポジションな感情)の脳回路網が停止し,負情動(ネガティブな感情)回路網が優勢になり,2項対立のバランスが崩れる事が慢性痛の引き金となる。

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